最高裁判所第三小法廷 昭和41年(オ)90号 判決 1968年10月15日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人畠山国重、同鍵尾丞治の上告理由第一点について。
記録によれば、上告人は、原審において従前の反訴請求について予備的に反訴の追加的変更の申立をしたものであることが明らかである。従つて、民訴法三七八条、同法二三二条により、著しく訴訟手続を遅滞せしめない場合であることが右訴変更の要件とされるものであるところ、原審は、上告人の右申立は右要件を欠くものと判断して、その理由中においてその旨判示し、本件予備的反訴の追加的変更は許されない旨判断しているのである。そして、裁判所が訴の変更申立を許すべからざるものと判断した場合には、その旨を判決の主文において宣言することは必ずしも必要ではなく、理由中において説示するをもつて足りると解すべきであるから、その旨を判示した原判決にはなんら所論のごとき違法はない。それ故、論旨は理由がない。
同第二点について。
上告人の本件予備的反訴の追加的変更の申立は、全く新たな事実を請求原因とするものであることは記録に照らして明らかであり、本件訴訟の審理の経過にかんがみれば、著しく訴訟手続を遅滞せしめること明らかであるとした原審の判断は正当としてこれを肯認することができる。従つて、原判決には所論のごとき違法はなく、論旨は理由がない。
同第三点について。
被上告人が上告人の予備的反訴請求原因事実を自白したものとみなすべき場合にあたらないことは、記録に照らして明らかであり、所論は、これと反する判断を前提とするものであつて理由がない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 田中二郎 裁判官 下村三郎 裁判官 松本正雄 裁判官 飯村義美)